運搬及び移送の基準
危険物を輸送する場合には、一般のトラックなどで輸送する「運搬」と移動タンク貯蔵所(タンクローリー)で輸送する「移送」があります。運搬と移送については混同しやすいのでしっかり理解しましょう。
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運搬と移送
運搬とは、一般のトラックの荷台に容器入りの危険物を積んで輸送することです。運搬は危険物が指定数量未満の場合であっても消防法の規制を受けます。例えば、ガソリンを100ℓ運搬する場合、ガソリンの指定数量は200ℓですので、貯蔵や取扱いの場合は、消防法の規制を受けることがないのですが、運搬の場合は、100ℓであっても規制を受けるということになります。
移送とは、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)による輸送することです。移送では危険物の指定数量未満の場合は消防法の規制を受けません。(市町村の定める条例により規制される)
運搬の基準
容器や積載方法などの技術上の基準が規定されてます。
運搬容器
運搬容器の構造は、堅固で容易に破損するおそれがなく、容器の口から収納された危険物が漏れるおそれがないものでなければなりません。
運搬容器の材質は、鋼板、アルミニウム板、ブリキ板、ガラスその他の規則で定められたものに限ります。また、危険物を収納する運搬容器は収納する危険物と危険な反応を起こさないような危険物の性質に適応した材質でなければなりません。
積載方法
危険物は、運搬容器に収納して積載することとされています。その他以下のような規制があります。
- 危険物は、温度変化等により危険物が漏れないように運搬容器を密封して収納すること。
- 固体の危険物は、運搬容器の内容積の95パーセント以下の収納率で運搬容器に収納すること。
- 液体の危険物は、運搬容器の内容積の98パーセント以下の収納率であって、かつ、55℃の温度において漏れないように十分な空間容積を有して運搬容器に収納すること。
- 運搬容器の外部に、危険物の品名、数量、収納する危険物に応じる注意事項(第四類危険物は火気厳禁)を表示して積載すること。
- 危険物が転落し、又は危険物を収納した運搬容器が落下し、転倒し、破損しないように積載すること。
- 運搬容器は、収納口を上方に向けて積載すること。
- 日光の直射又は雨水の浸透を防ぐため有効に被覆する等措置を講じて積載すること。
- 類を異にするその他の危険物又は災害を発生させるおそれのある物品と混載しないこと。
- 危険物を収納した運搬容器を積み重ねる場合は、3メートル以下とすること。
運搬容器の外部の表示事項
運搬容器の外部には、次の事項を表示することになっています。
- 危険物の品名
- 危険等級
- 化学名
- 第4類危険物の水溶性の場合は「水溶性」と表示
- 危険物の数量
- 収納する危険物に応じた注意事項
危険物の危険性の程度の応じて3段階に区分した等級のこと。
第4類危険物の危険等級の区分 | |
---|---|
危険等級Ⅰ | 特殊引火物 |
危険等級Ⅱ | 第1石油類 アルコール類 |
危険等級Ⅲ | 上記以外のもの |
類を異にする危険物の混載禁止について
類を異にする危険物を同一車両に積載することは、原則禁止されています。(混載禁止)ただし、次の表の危険物については混載が認められています。
危険物の類 | 第一類 | 第二類 | 第三類 | 第四類 | 第五類 | 第六類 |
---|---|---|---|---|---|---|
第一類 | — | × | × | × | × | ○ |
第二類 | × | — | × | ○ | ○ | × |
第三類 | × | × | — | ○ | × | × |
第四類 | × | ○ | ○ | — | ○ | × |
第五類 | × | ○ | × | ○ | — | × |
第六類 | ○ | × | × | × | × | — |
危険物は類を異にする危険物だけでなく、高圧ガスとの混載も禁止されています。
また、指定数量の10分の1以下の危険物は上記表とは関係なく、類を異にする危険物であっても混載可能です。
運搬方法
運搬方法の基準は次の通りです。
- 危険物を収納した運搬容器が著しく摩擦又は動揺を起さないように運搬すること。
- 運搬中危険物が著しくもれる等災害が発生するおそれのある場合は、災害を防止するため応急の措置を講ずるとともに、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
- 指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合には、車両に標識を車両の前後の見やすい箇所に掲げること。
- 指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合において、積替、休憩、故障等のため車両を一時停止させるときは、安全な場所を選び、かつ、運搬する危険物の保安に注意すること。
- 指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合には、消火設備のうち危険物に適応するものを備えること。
次の移送の場合には、危険物取扱者の乗車が義務付けられていますが、運搬の場合には、危険物取扱者の乗車は不要です。
運搬の標識と消火設備について
運搬の場合、指定数量と関係なく消防法の規制を原則受けることになりますが、標識と消火設備については、指定数量以上の場合において、備え付けなければなりません。
また、標識については、車両に掲げる標識は、0.3メートル平方以上の地が黒色の板に黄色の反射塗料で「危」と表示し、車両の前後の見やすい箇所に掲げなければならないとされています。
移送の場合の標識のサイズの違いに注意しましょう。
移送の基準
移送とは、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)によって危険物を輸送することを言います。
移送に関する基準は以下のようなものがあります。
- 移動タンク貯蔵所による危険物の移送は、危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させてこれをしなければならない。
- 危険物取扱者は、危険物の移送をする移動タンク貯蔵所に乗車しているときは、危険物取扱者免状を携帯していなければならない。
- 移送の開始前に、移動貯蔵タンクの底弁その他の弁、マンホール及び注入口のふた、消火器等の点検を十分に行なうこと。
- 長時間にわたるおそれがある移送であるときは、2人以上の運転要員を確保すること。
- 休憩、故障等のため一時停止させるときは、安全な場所を選ぶこと。
- アルキルアルミニウム、アルキルリチウムその他の危険物の移送をする場合には、移送の経路その他必要な事項を記載した書面を関係消防機関に送付するとともに、書面の写しを携帯し、書面に記載された内容に従うこと。
移送の場合の危険物取扱者の乗車義務
移動タンク貯蔵所で移送する場合には、輸送する危険物の取扱いができる危険物取扱者(免状を携帯)が乗車していなければなりません。この場合、危険物取扱者が運転をする必要がありません。資格問題では、「危険物取扱者が運転しなければならない」というようなひっかけ問題が出題されます。
長時間にわたるおそれのある移送の場合
連続運転時間が4時間を超える移送の場合、または1日あたり9時間を超える移送の場合には、2人以上の運転要員を確保する必要があります。
移送の標識
移動貯蔵タンクには、貯蔵、取り扱う危険物の類、品名、最大数量を表示する設備を見やすい箇所に設けるとともに、標識を掲げることになっています。
また、車両に掲げる標識は、0.3メートル平方以上0.4メートル平方以下の地が黒色の板に黄色の反射塗料で「危」と表示し、車両の前後の見やすい箇所に掲げなければなりません。
移動タンク貯蔵所(タンクローリー)の車両に備えておく書類
移動タンク貯蔵所では、危険物の移送する際に車両に、次の書類を常に備えておかなくてななりません。
- 完成検査済証
- 定期点検記録
- 譲渡又は引渡の届出書
- 品名、数量又は指定数量の倍数の変更の届出書
これらの書類について、写しではダメですので注意しておきましょう。